手術後の嘔気は30%ほどの頻度で起こるとされ、死に至ることはありませんが、
『痛みより、吐き気の方がつらかった』という患者さんも少なくありません。
PONVはbig little problem と形容され患者さんの満足度に関わる大きな問題となってます。
今回はThe American Society of Enhanced Recovery and Society for Ambulatory Anesthesia が取りまとめた2020年のPONVのガイドラインをベースにご説明します。
PONVの危険因子
患者サイドのリスク
- 女性
- 3歳以上(小児)50歳以下(成人)
- 非喫煙者
- 乗り物酔いしやすい人
外科サイドのリスク
- 1時間以上の手術
- 斜視の手術、産科、ラパロ、耳鼻科
麻酔サイドのリスク
- 麻薬
- 吸入麻酔薬
- 笑気
制吐薬の効果は掛け算でリスクを下げていく
2020年のメタ解析ですが、制吐剤(吐き気止め)の効果を数値化しています。
日本で使用可能な薬剤だけを抜き出してご紹介します。(プラセボを1とした時のRR)
Granisetron グラニセトロン 0.45
Dexamethasone デキサメサゾン 0.51
Ondansetron オンダンセトロン 0.55
Droperidol ドロペリドール 0.61
(Metoclopramideはランク外、順位不明)
コンボネーションで使う
これらの制吐剤を複数組み合わせます。
例えば、デキサメサゾンとグラニセトロンを組み合わせますと、0.45✖️0.51=0.229
とプラセボ群と比較して約80%ほど嘔気の発生を減らすことができます。
麻酔薬のリスク
プロポフォールによる静脈麻酔 TIVA
プロポフォール自体に制吐作用があり、プラセボを1とした場合、RR0.5となってます。
麻薬
麻薬なしを1とするとRR1.26ですので、感想としては想像よりは発生率は高くないと思いました。
輸液量の吐き気への影響
輸液は多めの方が発生率は下がります。
成人で 輸液量10-30ml/kg/hrはそれ以下の輸液量群と比べて、RR 0.62 。
小児では10ml/kg/hrと30ml/kg/hrが比較されてますが、
やはり輸液が多い方が発生率は少ないようです。
制吐薬の投薬タイミング
デキサメサゾン 麻酔導入時 (オンセットが遅いため)
オンダンセトロン、グラニセトロン 手術終了時
制吐剤の副作用
ドロペリドールとメトクロプラミドの場合は、錐体外路症状が
静注の場合12%、点滴の場合でも8%も起こります。
5-HT antagonistsの副作用はtorsades-de-pointesが有名ですが、QT時間に与える影響度は
実はMetocropramide(moderate)>Droperidol,Ondansetron(mild)>Granisetron
順に高くなっています。
メトプロプラミドを心電図のモニターなしで静注することは危険であると認識すべきでしょう。
まとめ
PONVのリスクが高い患者群、手術の術式や時間の長さにより、ハイリスク群は
麻酔はプロポフォールによるTIVA、デキサメサゾンを麻酔導入時に投与し、手術終了時にはオンダンセトロンやグラニセトロンを投与。輸液量は多めにする。
という戦略で手術後の吐き気は10分の1まで減らすことができます。
