『この患者さん、血圧は良いんだけど、何かおかしい、、アシドーシスが進む、、 ボリューム入れるか?

更にカテコラミンで叩いてみるか??』気が付いたらNOMIになっていた。そんな場面、結構あったのではないでしょうか?

読了後には、そんな場面の解決への糸口が掴めるかもしれません。

今まで臨床医に立ち塞さがっていた壁。 末梢循環不全、特にNOMI

通常は体循環を整えていけば、末梢循環の環流も改善してきます。

しかし、体循環の指標だけで管理しているといつの間にかNOMIになってしまった。

そんな経験をされた方もいらっしゃるでしょう。まず、体循環の指標についてご説明します。

体循環の指標

体循環の血行動態の指標ではCardiac Power Outputが優れていると思います。

Cardiac Power Output=平均血圧✖️心拍出量➗451 (単位はW )

平均血圧と心拍出量が計算式に入ることで、死亡率と高い相関性を持ちます。

心拍出量をモニターしていない場合は、

平均血圧を65mmHg 以上に管理する事は死亡率の改善や臓器保護の点で、広くコンセンサスが得られているエビデンスです。(近年では70mmHg)

体循環を良くすれば、末梢循環も良くなるはず、、、、

そうなることがほとんどですが、体循環が改善しても末梢循環は改善しない、逆に悪化する場面もあります。その場合は患者さんを救うことは出来ません。末梢循環不全でNOMIになってしまう可能性もあるでしょう。

では、末梢循環不全の早期発見の指標には何を見たら良いでしょうか?

ラクテートの値に気をつけてみよう

結論から言いますが、ラクテートの値に注意して、値が上がり始めたら、チームで情報を共有しておくことが大切です。また、治療開始後の効果判定でラクテートの値の変化を見ながら治療方針が正しいかどうか判断していくのも重要です。

例えば、ボリューム負荷、末梢循環改善薬の投与、ノルアドの減量などの治療をして方針が間違っていないか、正しい方向性なのかはラクテートの値を見ます。

cut-off値は4.0 m mol/L

2m mol/L以下が正常範囲ですが、

4m mol/Lは生存率のcut-offf値になります。

90日死亡 OR1.7

体循環と末梢循環がミスマッチを起こすとき

  • シャントによるスティーリング現象
  • 末梢血管内皮細胞(glycocalyx)の障害

シャントによるスティーリング現象

血管拡張薬は末梢循環不全の治療薬ですが、投与後に細動脈がまず開き始めます。

しかし、開く血管と開かない血管がまばらにあり、

開くほうに血流がシフトする現象が起こります。これがスティーリング現象です。

また、ノルアドレナリン使用時には、締まっているほうの血流が更に悪くなり、

我々医師は末梢組織での血流シャントを多く作り出してしまっていたのです。

末梢血管内皮細胞(glycocalyx)の障害

血管内皮レイヤーの構成組織としてのglycocalx(グリコカリックス)は負の電荷を持ち、

同じ負の電荷を持つタンパクなど血液成分と磁石のように反発し

血管外に漏出しないような仕組みになっています。

これが壊れると、血液成分が血管外に漏出し、間質に浮腫を生み酸素の拡散が出来なくなります。

また、血管が収縮し局所シャントを作り出します。

grycocalxはまた、単純な機械的なストレッチでも痛みます。

急速輸液などはその例ですが、

総輸液量が多いだけでも壊れてしまいます。輸液負荷は末梢循環不全の主な治療戦略ですが、

浮腫が血流を妨げている原因となっている場合は、輸液負荷が浮腫を増悪させる可能性があります。

ラクテート以外のMicro-circulationの指標

Pv-aCO2 gap (静脈血CO2と動脈血CO2の差)mmHg

静脈血はCVカテから採取する混合静脈血で代用できます。

動脈血ガス分析のPco2は40mmHg

静脈は45mmHgです。

差の正常値は5mmHg前後。

これがmicro circulation 不全になると、

酸素を取り込めませんので、CO2の産生も減少します。

結果、動脈血、静脈血ともにPco2は減りますが、

静脈血ー動脈血の格差は増大する傾向にあります。

この差が6mmHg以上は予後不良因子となります。

90日死亡 OR2.22

(結構、この指数は使えるかもしれません。)

(静脈血と動脈血のCO2の差が6以上はダメ!)

ScvO2 混合静脈酸素飽和度

スワンガンツやプリセップで連続モニターリングが可能な指標ですが、

75%を下回る時は酸素供給の低下を意味します。

ただ、特異度は低いです。

(75%より下がるのはダメ!)

capillary refill time(CRT)

人差し指の爪を圧迫解除後の色の戻る時間を計ります。

これはベッドサイドでの診断技術です。

速ければ、末梢の血流が豊富である事を表し、

ショックでの生存者の平均値は2.3秒

非生存者の平均値は5.6秒

cut-off値は2.4秒

侮る事なかれ、なんとsensitivity82%

SaO2モニターが脈を拾いにくい場合も、

Micro circulation が悪い兆候ですから、

一度、ラクテートを測ることをオススメします。

(爪の色が戻る時間が2.4秒より遅いのはダメ!)

まとめ 治療戦略

原因に応じて治療するしかありません。

シャントの場合、stealingの原因となる血管拡張を抑える事です。

ミルリーラを一時的に休止してみる。ノルアドを休止してみる。

Micro circulation 不全でCOとMAPを更に上げると、どうなるか調べたスタディがありますが、状況をあまり改善しなかったようです。

心臓由来の場合ならカテコラミン。酸素運搬の障害なら呼吸の治療と輸血。

末梢血管の過度な収縮であれば、ノルアドやピトレシンは中止し、血管拡張剤(プロスタンジン)を開始し

輸液を負荷する。

しかし、glycocalxが破綻して間質に漏れ出ている状態なら、輸液を負荷したら逆効果です。

大切なポイントは、薬剤でコントロール出来ないなら、

早めのタイミングでメカニカルサポートを導入する事が

生存率を上げるためには必要です。

ラクテートが上がったまま、カテコラミンを増量すると

必ずNOMIになります。

(大概の患者は、心不全、呼吸不全、貧血も合併します。)

無理せずにECMOを導入しましょう。