血圧を決める要素 4つ

  • 前負荷 (心臓が拡張した時の容積)
  • 後負荷 (体血管抵抗など)
  • 収縮力 (前負荷により引き伸ばされた心臓がゴムのように縮む時の力)
  • 心拍数 (1分間の心臓が拍動する数)

離脱の実践 4つの要素を整える順番

後負荷→収縮力→心拍数→前負荷

の順番で調整していきます。まずは体血管抵抗(SVR)とは何か説明致します。

ここを理解することがとても大切になります。

人工心肺装置の血圧は一本線になっている。

人工心肺中の血圧は人間の生理的な拍動流と違い同じ圧の血圧が続きます。

圧ラインが一本の線に見えますが、実は生理的な血圧の平均血圧と同じような意味合いを持ちます。

平均血圧を最低でも65mmHg保つことを臨床医は目安にしていますので、人工心肺中の一本の線の血圧も65mmHg以上を保つようにします。

この一本線の血圧は純粋なSVR (≒後負荷)を意味します。

人工心肺装置の流量は人間の心拍出量を元に充分な流量を出すようにしています。

血圧=心拍出量✖︎SVR

心拍出量が一定ならば、血圧はSVRで決まります。

ここまでは、ご理解いただけたでしょうか?

離脱の手順 1    SVRのベースラインを70mmHgに調整

SVRを意味する定常流の血圧を70mmHgに調整する。

ベースラインが低い時は血管収縮剤であるノルアドレナリンを持続投与します。

ベースラインが高すぎる場合は血管拡張薬であるニカルジピンを持続投与します。

なぜ、はじめにSVRを調整するのか?

それは次の図を見ていただくとわかると思いますが、定常流の一本線はSVRを意味すると先ほども述べましたが、心臓に血液を戻していくと拍動が始まります。するとこのベースラインの直線の上に収縮の要素が上に乗っていくことになります。血圧は波を打ってきますので、純粋なSVRはわからなくなります

心エコーでは収縮力や前負荷の評価はできますが、SVRはエコーでは判別できません

これがはじめにSVRをニュートラルベースラインに調整する意義です。

離脱の手順 2   収縮力を調節しSVRも微調整する

心臓に血液を少しずつ戻して収縮力を評価する。

人工心肺装置からの離脱はいきなりはしません。

離脱前に心臓の中の少量の空気を追い出す作業をします。

手順は少しずつ心臓に血液を戻して、心臓自身で拍動することを促します。

自分で拍動し出すと空気も少しずつ追い出されます。

麻酔科医はこのタイミングで心臓自身がどのぐらい自分で拍動できるか評価します。

収縮の評価 自己圧の波形の立ち上がりの角度と圧のピークの2点で評価

もし、収縮が十分でない場合

  • カテコラミンを増量する
  • SVRのベースラインをノルアドレナリンを増量し上げておく。
  • 心エコーも参考(人工心肺の前後で比較)

もし収縮が必要以上にある場合

この場合は人工心肺装置から血液をすべて心臓に戻しますと、過剰な血圧になり出血が増えてしまいます。

また、充分な血液を心臓に返せなかった場合においては、離脱後に出血があった場合には対応が難しくなります。

血圧が高いと良い面だけではないことを理解していただきたいと思います。

  • ニカルジピンでSVRのベースラインを下げておく。
  • カテコラミンの増量はしない。

SVRをこまめに調整するわけ

人工心肺中は3峰性に血圧は落ちる。

  • 人工心肺開始直後
  • 大動脈をクランプしプレジアをするとき(心筋保護液を注入)
  • 大動脈のデクランプ後

ここは麻酔科医が事前にノルアドレナリンを増量して事前にSVRを上げておくことを推奨される場面です。

どんな状況でも患者さんの平均血圧は65mmHgを保つことが合併症を防ぐ大事なことだからです。

特に最後の血圧低下の場面である大動脈のデクランプ(遮断解除)時

SVRを速やかに正確に調整しておかないと、SVRがわからないまま人工心肺装置からの離脱が始まってしまいます。

ここは意識的に調整を始めないと、時間の余裕がなくなってしまいます。

離脱の手順 3    心拍数を整える

  • 徐脈ならばペーシングします
  • 不整脈は除細動をします。

離脱の手順 4    前負荷を調節する

後負荷、収縮力、心拍数を適正な範囲に整えたら、あとは最後に前負荷を決めることだけが残っていますが、『上の血圧が90になるまで、ボリュームを入れて下さい』と人工心肺装置の技師さんに言うだけで離脱は終わります。

この際は、心エコーで収縮が落ちていないか、前負荷がかかり過ぎていないかだけ確認しながら、

血圧の上がり方を観察します。ここで充分な血圧が出ないと判明したならば、

また人工心肺装置からの離脱はやり直しすれば良いのです。

また、後負荷→収縮力→心拍数→前負荷の順番で再度調節し直します。

ここまでのまとめ

ポイントはSVRがわかるうちに調整しておかないと、収縮力や前負荷の要素が入ってくると麻酔科医の頭脳は情報処理量が多過ぎて混乱するでしょう。

一瞬の判断ミスが患者さんの命を失うことになりますので、可能な限り不確定な要素は固定しておき、

できるだけ除外して考えられるようにしておきます。心拍数は常にモニターされてますので、

あとは収縮力と前負荷だけコントロールするような麻酔コンセプトにしていけば、

あなたの心臓麻酔は飛躍的に安定すると思います。

次回は、人工心肺からの離脱パート2と人工心肺からの離脱の理論編1を説明する予定ですが、

今回の内容だけ理解して頂くだけでも充分だと思います。