AKIとは?

AKI(急性腎障害)は、術式によって発生率が異なりますが、心臓麻酔を伴う手術ではその頻度が50%に達すると報告されています。AKIは腎不全へと進行する手前の重大な状態であり、麻酔管理の質が患者の予後に大きく影響すると言っても過言ではありません。本稿では、まずAKIとはどのような状態なのかを解説いたします。

① 血清クレアチニン(SCr)の変化による診断

  • 48時間以内に SCrが 0.3 mg/dL以上 上昇
     または
  • 7日以内に SCrが ベースラインの1.5倍以上 に上昇

② 尿量による診断

  • 6時間以上にわたって 尿量が 0.5 mL/kg/時 未満

なぜAKIを予防する事が大切なのか?

AKIの予後に関するまとめ表(概略)

指標AKIなしAKIあり(軽度)AKIあり(重度)
院内死亡率1〜3%10〜15%最大40〜60%
CKD進行リスク基準値2〜5倍8〜10倍以上
ESKD(透析導入)リスク極めて低い約2〜3倍約10倍

麻酔科医がAKIを防ぐ事が出来なければ、腎機能は悪化し仮に正常値に戻ったとしても長期には腎機能は低下していく事がわかっています。ですから我々は一生懸命に予防する必要があるのです。

尿量確保が腎保護ではない

尿量は診断のためで、治療ではないことを覚えておいて下さい。

背景と根拠

◾昔の考え方

  • かつては「術中の尿量が0.5 mL/kg/h以上」なければAKIリスクと考えられていました。
  • そのため、多くの施設では尿量維持のために利尿薬(例:フロセミド)や輸液を行ってきました。

◾しかし現在は:

  • 術中の尿量は**「腎血流の代理マーカー」ではあるが、「AKIリスクの直接的な防止因子ではない」**と認識されています。
  • むしろ過剰な輸液や不必要な利尿薬投与は、むしろ腎血流の低下や浮腫悪化を引き起こす可能性があります。

主な研究・ガイドラインからの根拠

1. POQI (Perioperative Quality Initiative) 2020

  • 尿量をAKI予防の目標指標にすることは推奨しない
  • 尿量は“モニタリング指標”であって、“目標指標”ではないと明記

2. 大型観察研究(JAMA, 2017)

  • 尿量が術中に低下しても、他の要因(低血圧、循環動態、出血)を適切に管理していればAKI発症率に大きな差はないと報告

次の回ではエビデンスを踏まえた腎保護戦略を説明させていただきます。